染織文化の長い歴史を引き継ぎ、現代に蘇らせたビンハウス


バティックはインドネシアの伝統的なろうけつ染めの布のことです。布にろうを塗り染色すると、ろうを塗った部分だけ色が染まりません。この手法を使った染色方法がろうけつ染めです。
織りからろう置き、染めまで高度に熟練した職人たちの技として伝統として受け継がれ、すべて手作業で作られてきました。そのため、一時は安価な大量生産の機械捺染(プリント)に押され、職人も大幅に減ってしまいました。それに危機感を覚え、バティックの伝統を絶やすまいと立ち上がったのが、ビンハウスの主催者ジョセフィーヌ W.コマラです。アンティーク布に魅せられた彼女は、絶えつつあった職人を探し出し、糸、織り、染めと手仕事による布作りに取り組み始めました。木綿が主だったバティックの素材にシルクを用い、伝統を生かしながら新たなデザインも取り入れ、洗練された現代のバティックを作り出したのです。
ビンハウスのバティックは糸を紡ぐ、布を織る、文様を描く、ろうを布に置く、染める。すべて手作業で行っています。また主としてシルクを使用し、織りの段階で複雑な文様を織り出し、その上にろうけつ染めを施していることが特長です。 手織りで複雑な文様を織るのは非常に集中力を要求される作業です。一日に織れるのは複雑な文様になるとせいぜい35~40センチほどです。そして布地の柄の元となるろう置きはチャップ(型でろうを置く技法)とチャンティン(手書き)の2つの技法があります。チャップは模様を彫った銅型で版画のようにろうを置いていく技法です。チャンティンは細かい口金のついた10センチほどの銅製の道具を使い、細かい模様を手書きしていく技法です。ろうが固まると手書きで模様ひとつひとつを彩色していきます。そして熱湯に通してろうを落とします。
ビンハウスのバティックは1色ごとにろう置き、染色、ろう落としを繰り返します。色数がふえるほどに手間もかかります。 ビンハウスのバティックの複雑な色と模様は、気の遠くなるような職人たちの作業の結果生み出される、手仕事の結晶です。一枚を作り上げるのに数ヶ月~一年かかることも珍しくありません。
機械化、効率化とは無縁のバティックは、環境にも人にもやさしい、究極の手仕事のハイテクノロジーなのです。

更紗の語源

紀元前にインダス文明が発祥したインドは"染めと織りの国"と言われています。茜で染めた布が出土したことなどから、更紗発祥の地という説が一般的です(インドネシア説、中国説を唱える人達もいます)。インドの士語の最高級という意味をもつ言葉"サラーサ"が布と一緒に伝わり、更紗と呼ばれるようになったのではないかと言われています。

バティックの語源

インドネシア語で"点"を意味する、tik,titikと"沢山"を意味するbayaと言葉が一緒になって「バティック」になったと言われています。今では蝋捺染の生地は、世界中でバティックと呼ばれています。また日本語ではバティックと更紗は同じものをさしています。極上という意味の更紗が、長い歴史の中でインドネシア語のバティックとなったことは、バティックの歴史を示すものとして興味深いことです。

ビンハウスの布が出来るまで

1.糸を紡ぐ
ビンハウスの布は一本の糸を紡いでいくことから始まります。

2.生地を織る
複雑な地紋を丁寧に入れながら布を織るので、一日に折れるのは、40cmほど。根気と熟練の技術が求められる作業。

3.ろうを置く
染めた色の残したい部分をろうで伏せる。ろうを置いた部分の色が、次の染色時に残る。この作業には「チャンティン」と「チャップ」と呼ばれる2つの技を用い、どちらも長い経験が求められる作業。

4.模様を施す
チャンティンと呼ばれる小さな道具を使い、バティックを施していく。

5.色を染める
ろう書きした一枚一枚の布を手染めしてからろうを洗い落として行く。

6.洗う
ろうを置いては染め、洗って乾燥させることを繰り返し、多色使いの一枚の布ができあがる。完成までには長い時間と手間が必要。